人工衛星の見つけ方|スターリンクを肉眼で見る方法
人工衛星は、地球の影に入る深夜ではなく、日没後40分〜2時間の夕方と日出前2時間〜40分の明け方に肉眼で見つかる天体である。
地上が暗くても数百km上空には太陽光が届き、その反射で光るため、スマホと肉眼だけでも観測できる。
観望会では、通過時刻を予報して「この方角を見てください」と案内すると、参加者が一斉に「あ、動いてる!」と声を上げることが多い。
筆者はプラネタリウム勤務時代から年間60夜以上の観測遠征を続けてきたが、人工衛星は予報どおりに見えれば初心者でも手応えを得やすく、Level1として始めやすい対象だと感じている。
見分けるコツも単純で、点滅すれば飛行機、一瞬で消えれば流れ星、点滅せずに数十秒から数分かけて進み、途中で徐々に暗くなるものが人工衛星だ。
この記事では、太陽光の反射という原理から時刻の見極め方、方角の当て方までを順にたどれば、自分で「いつ・どの空を見ればいいか」を割り出せるようにします。
SNSで話題になるスターリンクトレインは、打ち上げ直後の数日だけ列に見える一過性の現象で、毎晩見える衛星とは狙い方が違う。
観望会で何度も受けてきた「あれは飛行機ですか流れ星ですか」という質問にも答えながら、今夜から実践できる見分け方と成功のコツをまとめていきます。
人工衛星はなぜ肉眼で見えるのか
人工衛星が肉眼で見えるのは、衛星そのものが光っているからではなく、表面に当たった太陽光を反射しているからです。
だから見えるかどうかは、衛星の材質よりも太陽の位置と空の明るさで決まります。
地上が暗くなっても上空の衛星にはまだ日が当たる時間帯があり、その瞬間だけ空の中で点の光として浮かび上がるのです。
衛星は自分で光らず太陽光を反射している
観望会で「衛星は自分で光っているんですか」と聞かれることがよくありますが、そこで「反射ですよ、だから真夜中はほとんど見えないんです」と返すと、皆さんが一気に腑に落ちた顔をします。
電球のように発光しているのではなく、太陽光を受けた面だけが見えている、と考えると筋が通るからです。
つまり、観測者が見るのは衛星の光そのものではなく、太陽の光を運んでくる鏡のような面です。
ここを押さえると、なぜ見える時刻を自分で逆算できるのかが分かってきます。
地上は暗く上空だけ明るい『薄明』のときに光る
地上ではすでに日が沈んでいても、数百km上空の衛星にはまだ太陽光が届いている時間帯があります。
この「地上は暗い・上空は明るい」というすれ違いが成立するのが、夕方と明け方の薄明です。
夕方なら日没後40分〜2時間、明け方なら日出前2時間〜40分が狙い目で、深夜は衛星が地球の影に入るためほとんど見えません。
遠征先で日没後しばらく空を眺めていると、必ずいくつかの光がスーッと横切りますが、あの見え方はまさにこの条件が整っている証拠です。
遠征仲間と「今日は何個数えられるか」を競うのが定番になるのも、特別な偶然ではなく、時間さえ合えば何度でも起きる現象だからでしょう。
ℹ️ Note
条件のよい暗い空では、一晩で肉眼でも数百個の人工衛星が見えるとされ、双眼鏡を使えば千個ほどに増えます。見えるかどうかは運任せではなく、時刻と空の状態を合わせるかどうかで決まります。
低い軌道の衛星ほど明るく見える理由
見やすいのはおおむね高度300〜1000kmの低軌道衛星です。
地表に近いぶん見かけの移動がはっきりし、反射した光も地上から拾いやすいからです。
スターリンクの運用高度は約500〜600kmで、この好条件の帯に入っています。
打ち上げ直後のスターリンクトレインが連なって見えるのも、運用高度へ上がる前後にまとまった配置で空を横切るためです。
こうした衛星は、条件がそろうと肉眼でも十分に追えます。
難易度はLevel1で、望遠鏡も双眼鏡も不要です。
必要なのは、見える時刻に、視界の開けた空を、肉眼で見ることだけです。
人工衛星が見える時刻は夕方と明け方の2回
人工衛星が見えるのは、衛星が自分で光っているからではなく、表面に当たった太陽光を反射しているからです。
地上が暗くなっても上空にはまだ太陽光が届く夕方と、地上は明るくなり始めるのに上空はまだ照らされている明け方だけが、肉眼観測の本命になります。
深夜に見えなくなるのも理屈は同じで、衛星が地球の影に入って反射光を失うためです。
夕方の観測ウインドウ
夕方の狙い目は、日没後40分ごろから2時間ほどです。
日没直後は空がまだ明るく、衛星の姿が背景に埋もれやすいのに対し、時間がたちすぎると衛星そのものが地球の影に入り始め、見える数が目に見えて減っていきます。
だからこそ、星が見え始める頃合いを逃さず、暗さと照明条件がそろう短い窓を押さえるのが観測の肝になります。
筆者は遠征の予定を組むとき、まず日没時刻から逆算して「19時20分〜21時が衛星タイム」とメモするようにしています。
この習慣を入れてから、空振りははっきり減りました。
時間帯を先に決めておくと、現地で空を見上げるべき瞬間がぶれません。
明け方の観測ウインドウ
明け方は日出前2時間ごろから日出40分前あたりが好機です。
夕方と時間の流れが逆になるだけで、条件の考え方は同じです。
夜更かしより早起きが得意な人には相性がよく、夕方に通過予報がない日でも、翌朝に視線を切り替えるだけで観測のチャンスが残ります。
深夜から現地入りしていったん仮眠し、日出90分前に起きて空を見上げると、東の低空に次々と衛星が現れます。
まだ薄暗い空の中で、点滅せずに静かに流れていく光が連続して見えるので、早朝観測には独特の臨場感があります。
こういう場面では、起床のタイミングを少し前倒しするだけで見える対象が一気に増えるのです。
深夜に見えなくなるのはなぜか
深夜にほとんど見えなくなるのは、その時間帯に衛星がすっぽり地球の影へ入るからです。
反射する太陽光が届かなければ、数百km上空にあっても肉眼では捉えようがありません。
真夜中に星を見に行ったのに衛星が見えなかった、という失敗はこの理屈で説明できます。
観測計画の第一歩は、今夜か明日朝の日没・日出時刻を調べ、そこから40分〜2時間の窓を作ることです。
あとはその窓の中でアプリの予報と照合し、方位角と仰角を確認すれば、狙いをかなり絞れます。
衛星は特別な対象ではなく、時刻と空の条件が合えば日常的に見える存在です。
おすすめです。
見える時刻と方角を調べる手順
衛星予報アプリや予報サイトを開いたら、最初にやるのは観測地の設定です。
自宅の位置情報を自動で拾うだけでなく、緯度経度まで正しく入っているかを確認すると、通過時刻や方角のズレを避けやすくなります。
ここが合っていないと、予報がどれだけ細かくても空振りになります。
Step1: 観測地(現在地)をアプリに設定する
まず観測したい場所の緯度経度を基準に合わせます。
衛星は地球上のどこから見るかで通過の見え方が変わるため、観測地がずれると「その時刻に見えるはずの光」が別の方角に出てしまいます。
移動先で見る予定なら、現地に着く前に登録を済ませておくと準備が整いやすいでしょう。
通知を使う前提でも、観測地が違えば通知の時刻自体が役に立ちません。
観望会では、参加者全員にコンパスアプリで南西を向いてもらい、「あの星とあの星の間から出ますよ」と仰角まで指定して待機します。
予報どおりに光が現れた瞬間、場の空気が一気にそろうあの感じは格別です。
場所と向きが合えば、初心者でも「見えた」という確信を持てるので、最初の設定は軽く見ないほうがいいですね。
Step2: 通過時刻・方角・仰角・継続時間を読む
予報画面では、通過時刻だけでなく方角、仰角、継続時間をセットで読みます。
方角は北を0度、東90度、南180度、西270度の方位角で示されるので、「南西」よりも数値で見るほうが迷いません。
仰角は地平線が0度、真上が90度です。
高い通過ほど建物や木に遮られにくく、光も見つけやすいので、初めてなら仰角の高い通過を優先すると成功しやすいでしょう。
ℹ️ Note
1回の通過で見える時間は、おおむね1〜数分です。出現する方角と消える方角まで見ておくと、空を追う動きがつながります。
筆者も初めて予報アプリを使ったとき、方角は合っていたのに仰角の低い通過を選んでしまい、近くのマンションに隠れて見えませんでした。
あの失敗以来、まず仰角を確認し、高い通過を優先するようになりました。
継続時間が短くても、高度があれば追いやすい。
逆に低い通過は、時刻が合っていても障害物で消えるので、読み方の中では仰角がいちばん効きます。
おすすめです。
Step3: スマホのコンパスと星図で空に当てる
方角が分かったら、スマホのコンパスで体の向きを合わせます。
南西なら南より少し西、という感覚ではなく、方位角の数字に合わせて向きを決めると再現性が上がります。
次に星図アプリのAR表示を使えば、スマホをかざした方向に軌跡が重なって見えるので、どの星の近くを通るのかが一目で分かります。
通知機能もここで活きます。
数分前に知らせる設定にしておけば、空を見上げるタイミングを逃しにくくなります。
方角と高度が決まれば、あとは空の中のどこを見るかを体で覚える段階です。
星図で通過線を確認し、コンパスで向きを合わせ、通知で待機時間を短くする。
この3つがそろうと、予報は単なる数字ではなく、実際の空の位置情報になります。
見つけるコツは、数字と目の両方で照合することです。
しましょう。
スターリンクトレインを肉眼で見る方法
スターリンクトレインは、打ち上げ直後の数十機の衛星が、ほぼ等間隔の光の列になって夜空を横切る現象です。
数日たつと列はほどけ、同じ衛星でもバラバラの点としてしか見えなくなります。
だから観測の鍵は、見たい日を選ぶことではなく、直近の打ち上げ直後をつかむことにあります。
スターリンクトレインの正体と見える期間
打ち上げ直後のスターリンクは、まだ衛星同士が密集しています。
そのため、数十機規模の機体が一本の線のようにつながり、SNSで「銀河鉄道」と呼ばれるほど印象的に見えるのです。
実際に見上げると、点が一つ、また一つと現れ、やがて等間隔の列になって頭上を通り過ぎます。
周囲から自然に「おおっ」と声が漏れたのも、この独特の見え方があるからでしょう。
この列に見える状態は、打ち上げ後おおむね数日以内に限られます。
各機は運用高度の約550kmへ上がるにつれて軌道上に散らばり、間隔が広がって、列ではなく個別の点に変わっていきます。
別の日に、打ち上げから一週間後の空を同じつもりで見上げると、列はなく、バラバラの点しか見えません。
拍子抜けするのですが、それこそがスターリンクトレインの性質です。
打ち上げ直後の通過を予報ツールで探す
観測の手順は、通常の衛星と同じく夕方か明け方の空を狙い、方角と仰角の予報を確認する流れです。
ただしスターリンクは、専用の予報ツールで直近の打ち上げ後に自分の場所を通る通過を探すのが近道になります。
打ち上げニュースが出たら数日間は空を見る準備をしておくと、列が残っているうちに拾いやすくなります。
予報で見るべきなのは、いつ通るかだけではありません。
北西から南東へ抜けるのか、地平線近くをかすめるのか、頭上を通るのかで見え方が変わるからです。
明るい空の下では見落としやすいので、夕暮れ後のまだ空がほどよく暗い時間帯が狙い目です。
条件がそろうと、細かな点ではなく、連なった光として一気に見えてきます。
見えにくくなった近年の事情
近年は衛星表面を暗くする改良が進み、以前ほどはっきりした明るいトレインは減ってきました。
見えにくくなった、という声が出ているのはこのためです。
だからこそ、打ち上げ直後の最も明るいタイミングを逃さないことが観測の肝になります。
列がよく見えるのは、まさにその短い時間だけだと覚えておくとよいでしょう。
もっとも、トレインを見逃しても終わりではありません。
運用高度に上がった個々のスターリンクは、定常衛星として時々通過します。
つまり、列としての見え方は打ち上げ直後限定ですが、単独の点としては日常的に追えます。
観測の面白さはここにあり、同じ衛星でも段階によって姿が変わるのです。
おすすめです。
人工衛星・飛行機・流れ星の見分け方
人工衛星は自ら光っているのではなく、太陽光を反射して見えています。
そのため、地上が暗くなったあとでも、上空の衛星だけにまだ日が当たる薄明の時間帯に、空を横切る光として観測できます。
高度の低い低軌道衛星ほど地球の影と明るい空の境目を長く走るので、見つけやすいのも特徴です。
観測を始めると、今のは衛星なのか飛行機なのか流れ星なのか、必ず迷います。
見分ける軸は動く速さ、点滅の有無、途中で消えるかの3つです。
観望会でも「あれは流れ星ですか」と聞かれたら、まず「点滅してますか」「何秒見えてますか」と逆質問して、一緒に判定します。
参加者が自分の目で言い当てられるようになる瞬間が、現場ではいちばんうれしい場面です。
動く速さで見分ける
流れ星は一瞬です。
1秒以下でサッと消えるので、視界を横切ったと気づいた時にはもう終わっていることが多いでしょう。
人工衛星はもっと落ち着いた動きで、空を横切るのに数十秒から数分かかります。
筆者も観測を始めた頃は、このゆっくりした移動を見て「何か長く流れた」と勘違いしていましたが、何度も見ているうちに、ゆっくり動き続ける光こそ衛星だと体で覚えました。
スターリンクのような低軌道衛星は運用高度がおおむね500〜600kmで、見えやすい低軌道衛星全体でも約300〜1000kmに収まります。
高度が低いぶん移動が大きく見え、暗い空なら肉眼でも一晩に数百個、双眼鏡では千個ほど見つかります。
点滅の有無で見分ける
飛行機は赤・緑・白のライトが点滅します。
空の中で規則的に明滅していれば、まず飛行機と見てよいでしょう。
人工衛星には航行灯がなく、明るさは基本的に一定で、光が滑らかに移動します。
点滅がない、しかも姿勢が変わったような不規則な明滅もないなら、衛星の可能性が高くなります。
観望会で参加者にこの違いを伝えると、ただ見上げるだけだった人が、自分で光の性質を読み取れるようになります。
そこで初めて、空の見え方が少し変わるのです。
途中で消えるのは衛星のサイン
一定の明るさで動いていた光が、空の途中で数秒かけてスーッと暗くなって消えたら、それは衛星が地球の影に入った合図です。
筆者が流れ星と間違えていたのも、このフェードアウトでした。
流れ星は瞬間的に消えるのに対し、衛星は太陽光を失うにつれて、ゆるやかに暗くなっていきます。
色や明るさが少しずつ変わりながら消える動きも、衛星でよく見られる手がかりです。
動く速さ、点滅の有無、最後の消え方を重ねて見ると、ほとんどの動く光はかなり高い確率で言い当てられます。
観測を成功させるコツとよくある失敗
衛星観測は、見える場所を選ぶだけで成功率が変わります。
空が広く抜けていて、街灯やビルの光が視界に入らない暗い場所なら、暗い衛星まで拾いやすくなるからです。
明るい衛星やISSは都市部でも肉眼でとらえられますが、条件のよい場所へ少し移動するだけで、見える数と見え方の安定感が変わります。
視界が開けた暗い場所を選ぶ
場所選びでまず見るべきなのは、頭上の空がどれだけ大きく開けているかです。
建物の稜線が高いと、低い仰角で通る衛星はすぐ隠れてしまいますし、近くの街灯が視界に入ると目が明るさに引っ張られて暗い天体を見落としやすくなります。
郊外の暗い空まで出かける価値があるのは、暗い衛星を追うときほど背景の暗さが効いてくるからです。
まずは明るい衛星で感覚をつかみ、次に暗い空へ広げていくと、見える世界が一段変わってきます。
暗順応とスマホ画面の扱い
目を暗さに慣らす暗順応も、観測の成否を分ける要素です。
屋外に出てすぐは、目がまだ明るさを覚えているので、せっかく頭上を横切っている衛星を見逃しがちです。
10〜20分ほど暗い空を見続けると、最初は消えたように見えた星や衛星が少しずつ浮かび上がってきます。
筆者も初心者の頃、家を出てすぐ「何も見えない」と5分で諦めかけましたが、その場で待っているうちに目が慣れ、次々と衛星が見え始めました。
観測中はスマホ画面の明るさを最小にするか赤色表示にして、せっかくの暗順応を崩さないようにしましょう。
天候・月明かりの事前チェック
天候と月明かりの確認は、空振りを避けるための基本です。
雲が広がっていれば当然見えませんし、満月前後は空全体が明るくなって暗い衛星の存在感が薄れます。
観測前に雲量と月齢(月明かり)を見て、晴れて月の細い日を選ぶだけで、同じ場所でも結果がまるで違ってきます。
観望会では満月の夜に企画してしまい、明るい衛星しか見えず参加者に申し訳なかったことがあります。
以来、月齢を必ず確認して日を決めるようになりました。
深夜に行ってしまう、仰角の低い通過を選んで建物に隠れる、目が慣れる前に諦める。
この3つを避けるだけでも、成功率はぐっと上がります。
次の観測では、まず空の暗さと月の状態を見てから出かけてみてください。
元プラネタリウムスタッフ。年間60夜以上の観測遠征を続けるフリー天文ライター。星空案内人の資格を持ち、全国の観測スポットと季節の星空ガイドを得意とします。
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