星空観測

北極星の探し方|北斗七星とカシオペヤ座で見つける

更新: 宮沢 拓海

北極星はこぐま座のα星ポラリスで、天の北極から約0.7度しか離れていないため、一晩中ほとんど同じ位置に見えます。
古くから方角の基準として重宝されてきたのは、この「動かない星」という性質があるからです。

ただ、北極星は夜空でいちばん明るい星ではありません。
見かけの明るさは約2等星で、シリウスや金星のように目立つ存在ではないため、北斗七星のひしゃくの先2星を使って位置をたどる手順が役に立ちます。

北斗七星が低い季節には、北極星をはさんで反対側にあるカシオペヤ座がもう一つの道しるべになります。
プラネタリウム勤務と年間60夜超の観測遠征で、初心者が立ち尽くす場面を何度も見てきた経験からも、この2ルートを使い分けるだけで探しやすさは変わります。

実際には、星が多すぎる真っ暗な場所より、少し街明かりのある郊外のほうが2等星の北極星は浮き上がって見つけやすいものです。
仕組みと手順を先に押さえれば、北極星は思っているよりずっと見つけやすくなります。

そもそも北極星とは?まず知っておきたい基礎知識

北極星は、夜空でたまたま目立つ一等星ではなく、こぐま座のα星ポラリスという固有の星です。
見かけの明るさは約2等星なので、最初に目につく星を追う探し方では外しやすく、周囲の星の並びから位置をたどる発想が欠かせません。
しかも天の北極にきわめて近いため、空の回転の中心のようにほとんど動かず、方角を知る基準として長く使われてきました。

北極星の正体はこぐま座のしっぽの先の星

北極星の正体は、こぐま座のα星ポラリスです。
こぐま座のひしゃくの柄の先端、子グマのしっぽの先にある星だと押さえておくと、見つけたあとに「本当に北極星か」を確かめやすくなります。
北斗七星の小型版のような並びの端にある、と覚えておくのも実用的です。
観望会で「どれが北極星だと思いますか」と聞くと、たいてい一番明るい星に手が伸びますが、入口はそこではありません。

意外と暗い2等星——『一番明るい星』ではない

北極星は見かけの明るさが約2等星で、シリウスの-1.5等や金星の圧倒的な輝きと比べると地味です。
実際、プラネタリウムで案内していた頃も、最初に「北極星は意外と暗いんです」と伝えるところから話が始まりました。
遠くから見ると控えめでも、地球からの距離は約430光年で、観測により432〜433光年とされます。
実体は太陽よりはるかに大きく明るい黄色超巨星なのに、遠いため肉眼では2等星に見える、この落差が北極星らしさです。

なぜ一晩中ほとんど動かないのか

北極星が動かないように見える理由は、天の北極から約0.7度しか離れていないからです。
地球が自転しても、北極星は回転の中心に近い位置にあるため、他の星のように大きく移動せず、空全体がその周りを回って見えます。
長時間露光の写真で星が同心円を描く日周運動を見せると、この関係は一気に腑に落ちます。
北極星だけがほぼ同じ場所に残るからこそ、一晩中、そして一年を通じて方角の基準にできるのです。

北斗七星から探す——最も定番の見つけ方

北斗七星から北極星を探す方法は、夜空でいちばん再現しやすい定番です。
まずはひしゃくの形を見つけ、先端側の2星であるβ星メラク(約2.4等)とα星ドゥーベ(約1.8等)を押さえれば、そこから北の基準点へ一直線にたどれます。
北極星はこぐま座のα星ポラリスで、見かけの明るさは約2等星ですが、ひしゃくの目印を使えば「目立たない星を単独で探す」負担がぐっと減ります。

指極星メラクとドゥーベを見つける

北斗七星はおおぐま座の一部で、ひしゃくの形が見つかれば入口はもう半分終わっています。
先端の2星が指極星で、β星メラクとα星ドゥーベです。
この2星は北極星を示すポインターとして使えるので、まず名前と位置を結びつけて覚えるのが近道でしょう。
初心者を案内するとき、筆者はレーザーポインターでこの2星を確認し、そこから先の道筋を一度見せるようにしています。
ここで星名まで言えると、次の手順がずっと安定します。

間隔を5倍に延ばすと北極星にたどり着く

メラクからドゥーベへ向かう線を、その間隔の約5倍だけ外側へ延ばすと、中くらいの明るさの星に行き着きます。
これが北極星です。
向きを逆にするとひしゃく側へ戻ってしまうので、『すくう口の外側へ延ばす』と覚えると迷いにくいでしょう。
遠征先でひしゃくが真上近くまで上がっていた春の夜、参加者が「延ばす向きが上下逆だと思った」とつまずいたことがあり、それ以来、線の向きは特に丁寧に伝えるようになりました。
5倍の距離は感覚だけだと取り違えやすいので、腕を伸ばしてこぶしの幅で見当をつける方法もおすすめです。
指1〜2本分の間隔なら、こぶし1個分強を目安にしましょう。

ひしゃくが傾いていても指極星は必ず北極星を指す

北斗七星は約24時間で北極星の周りを反時計回りに1周します。
だから、ひしゃくが立って見える夜も、寝そべるような角度に見える夜もありますが、指極星と北極星の位置関係そのものは変わりません。
見え方が回転しても手順は同じで、いつ見ても同じ線を引けばよいのです。
実際に案内していると、最初は星の並びが動いて見えて戸惑う人が多いものの、「回っているのは北斗七星のほうだ」と分かると一気に腑に落ちます。
ひしゃくの形さえつかめれば、夜空の向きが変わっても再現できる探し方になるでしょう。

ℹ️ Note

北極星は天の北極から約0.7度しか離れていないため、地球が自転してもほぼ同じ位置に見えます。見つけたあとは、その真下がほぼ真北です。

カシオペヤ座から探す——北斗七星が見えないときの代替ルート

カシオペヤ座は、W字に並ぶ5つの星を手がかりに北極星へたどる、もうひとつの実用的な入口です。
北斗七星が地平線近くに沈んで見つからない季節でも、北極星をはさんでちょうど反対側にあるため、空の高い位置から探せます。
見た目がはっきりしているぶん、初心者でも拾いやすく、現場ではこちらのほうが分かりやすいと感じる場面が少なくありません。

W字の5つの星を見分ける

カシオペヤ座は、アルファベットのW、時間帯によってはMの形に見える5つの星でできています。
まずこの形そのものを見つけることが、北極星探しの出発点になります。
北斗七星のように柄杓の形を覚える方法とは違い、カシオペヤ座はギザギザした輪郭が目に入りやすく、星座に慣れていない人でも輪郭で判断しやすいのが利点です。

秋の遠征で北斗七星が北の山際に沈んでいたとき、参加者にカシオペヤ座を案内したら「こっちのほうが分かりやすい」と好評でした。
Wの形は独特で、形の一部が欠けて見えても全体像をつかみやすいので、最初の目印に向いています。
北の空を見上げて、5つの星が描く折れ線を先に押さえましょう。

両端のラインの交点から5倍延ばす

探し方は北斗七星と同じ考え方です。
Wの両端にある2組の星のラインをそれぞれ外側へ延長し、その2本が交わる点を見つけます。
次に、その交点とWの真ん中の星を結び、そこから約5倍の距離だけ同じ方向へ延ばすと北極星に届きます。
線を引く順番が決まっているので、空のどこを見ればよいか迷いにくい方法です。

この「5倍ルール」は、北斗七星で覚える方法と本質的に同じです。
まず形で当たりをつけ、そこから距離で詰める。
遠征先で星が少しにじんで見える夜でも、輪郭と比率だけで追えるのが強みだと感じます。
都市部で北の視界が建物にふさがれるときも、高い位置に上がったカシオペヤ座を主軸にすれば、北極星までの見通しが立てやすいでしょう。

北斗七星とカシオペヤは『どちらかが高ければ片方は低い』

カシオペヤ座も周極星なので、一年中沈みません。
北斗七星と北極星をはさんでちょうど反対側に位置するため、片方が北の低い位置で見えにくいときは、もう片方が高い位置に来ています。
この関係を覚えておくと、季節が変わっても探し方がぶれません。
北の空が空けていない夜ほど、代替ルートとしての価値がはっきりします。

筆者自身、北の視界が建物でふさがれた都市部の観測では、カシオペヤ座のほうを先に見ることが多いです。
高く上がっていれば見つけやすく、そこから北極星までの流れも自然につながります。
北斗七星が低くて追えない日こそ、カシオペヤ座を使って北の基準点をつかんでみてください。

今夜どちらで探す?季節と時間帯による使い分け

北斗七星もカシオペヤ座も、本州の空では一年中地平線の下に沈まない周極星です。
けれど、見えることと見つけやすいことは同じではありません。
18〜24時の観測では、季節によって高さが大きく変わるので、その夜に高いほうを選ぶだけで北極星への近道になります。

周極星だから一年中見えるが『高さ』は変わる

北斗七星もカシオペヤ座も周極星で、本州の北緯35度前後なら一年中地平線の下に沈みません。
ただし、星をたどるときに効くのは「沈まないか」より「どれだけ高く上がっているか」です。
地平線近くにある星は家や木に隠れやすく、視野の中で形も追いにくいので、同じ星座でも探しやすさが季節で変わります。

この違いを意識すると、夜空の案内がぐっと楽になります。周極星は消えないのに、使い方は毎晩同じではない。そこが面白いところです。

春〜夏は北斗七星、秋〜冬はカシオペヤ

宵から夜半、つまり18〜24時の一般的な観測時間帯では、北斗七星は春から初夏に北東〜天頂寄りの高い位置へ上がります。
柄杓の形が空の高い場所で見つかるので、北極星を見つける入口として扱いやすい時期です。
春の夜空で北斗七星が定番の目印になるのは、この高さの差があるからです。
筆者も観望会の日程に合わせて、季節と時刻ごとにどちらが高いかを先にシミュレーションし、案内ルートを組み立てています。

逆に秋から冬の宵は、北斗七星が北の地平線近くまで下がり、建物や木に隠れやすくなります。
その場で北斗七星を探すより、反対側で高く昇っているカシオペヤ座から入ったほうがずっと確実です。
冬の観望会では、最初からカシオペヤ座スタートで組むこともあります。
実際、同じ場所でも21時と23時では北斗七星の高さがかなり変わり、遅れて来た参加者には説明の順番を入れ替えたほうが伝わりやすい場面がありました。

迷ったら両方たどって答え合わせ

どちらで探すか迷ったら、まず見つけやすいほうで北極星に当たりをつけます。
そのあと、もう一方の星座から同じ星にたどり着けるか確かめると、位置関係が体に入ります。
2ルートが交差する一点が北極星、という見方です。
片方だけで見つけるより、もう片方でも同じ結論に届くと安心感が生まれます。
初めての夜こそ、答え合わせをしながら進めてみてください。

つまずきポイントと失敗しないコツ

暗い空ほど北極星が見つかりやすい、と思われがちですが、実際には逆で、星がきれいに見える場所ほど周囲に同じ明るさの星が増え、2等星の北極星が埋もれやすくなります。
筆者が標高の高い暗い遠征地で初心者を案内したときも、全員が星の多さに惑わされ、結局スマホアプリで答え合わせをすることになりました。
少し街明かりのある郊外や住宅地のほうが、暗い星がほどよく消えて北極星と指極星が背景から浮き上がる。
暗ければいいわけではない、というのが現場での実感です。

暗すぎる空は逆効果——『ほどよい光』が味方

北極星は明るい一等星ではなく、2等星です。
だからこそ、満天の星が見える環境では「見えている星は多いのに、肝心の星だけ見失う」という現象が起きます。
周囲に同じくらいの明るさの星が無数に並ぶと、北斗七星から5倍先をたどっても「これで合ってる?」と不安になりやすいのです。
むしろ、わずかに街明かりがある郊外や住宅地では暗い星が少し整理され、北極星がぱっと浮き上がります。
住宅地のベランダ観望会では、参加者がすぐ見つけられて、暗さより見分けやすさが大切だとよくわかりました。

まず北の方角と開けた視界を確保する

探し始める前に、北の方角を先に押さえることが近道です。
北斗七星もカシオペヤ座も北の空にあるため、北側が建物や木でふさがれていると、目印そのものが見えません。
先に視界を確保しておけば、北斗七星から北極星へたどる流れも、カシオペヤ座を使う流れもずっと安定します。
最初に必要なのは星の知識より、空のどこを見ているかをはっきりさせることだ、という順番です。

星座アプリで最後の答え合わせをする

慣れないうちは、星座アプリで確認するのがいちばん確実です。
空にかざすとその方向の星座名が表示されるので、自分が見つけた星が本当にポラリスかどうかをその場で照合できます。
北斗七星を起点にして5倍の先をたどり、カシオペヤ座でも位置を確かめ、最後にアプリで答え合わせをする流れにしておくと迷いにくいでしょう。
最初の数回でこの確認を習慣にしておくと、星の見え方と方角の感覚がしっかり結びついていきます。

見つけた北極星を使いこなす——方角と緯度を読む

北極星は、見つけたあとにどう使うかで価値がはっきりします。
星の真下へ地平線までまっすぐ下ろした位置がほぼ真北になるので、夜の野外では方位の基準として頼りになります。
登山中に道に迷いかけた場面でも、雲間にのぞいた北極星で進路を立て直せたことがあり、いまも実用的なコンパスだと実感します。

北極星の真下が『真北』になる

北極星は地球の自転軸の延長線に近い方向にあるため、空の中でほとんど動きません。
そのため、星を見つけてから地平線へまっすぐ落とした位置は、方位の基準としてほぼ真北になります。
山や海辺のように目印が少ない場所ほど、この「動かない北」を知っているだけで進む方向の確かさが変わります。

方位磁石より正確——磁北とのずれを知る

方位磁石が指す磁北は、真北と一致しません。
日本付近では真北から約5〜9度西にずれるので、コンパスをそのまま真北の線引きに使うと、少しだけ進路が外れます。
厳密な北を知りたい場面では、北極星のほうが判断の軸としてすっきりしています。
磁石が便利なのは昼でも使えることですが、夜に北極星が見えているなら、空の基準点のほうがずれの少ない目安になるわけです。

高度を測ればおおよその緯度が分かる

北極星の地平線からの高度は、観測地の緯度にほぼ等しくなります。
北緯35度の東京では約35度の高さに見え、北へ行くほど高く、南へ行くほど低くなります。
観望会で参加者にこぶしを伸ばして測ってもらうと、北極星までこぶし3〜4個分なら北緯30〜40度くらいだと見当がつき、天文と地理がその場でつながって驚かれます。
腕を伸ばしたこぶし1個分を約10度の目安にすれば、空の高さから自分のいる場所の緯度を体の物差しで概算できます。

北極星にまつわる豆知識——過去と未来の北極星

北極星は、空でいつも同じ位置にいるように見えて、実は時代ごとに役者が交代しています。
地球の自転軸がコマのようにゆっくり首振り運動をするためで、天の北極は約25,800年周期で天球上を一周するのです。
だからこそ、北の目印になる星は永遠の固定メンバーではありません。

北極星は時代とともに交代する

星空を見上げると、北の方向は不変に思えます。
けれど、その「北」を指す星は、地球の軸の揺らぎに合わせて静かに入れ替わってきました。
歳差運動は肉眼では気づけないほどゆっくりですが、天文の時間で見れば星座の配置を少しずつ塗り替える力を持っています。
いまポラリスが北極星として親しまれているのも、たまたまこの時代に天の北極へ近い位置を占めているからです。

過去の北極星ツバン、未来の北極星ベガ

紀元前2000年代頃、天の北極の近くにいたのはりゅう座α星ツバンでした。
当時の人々にとっては、この星が北を示す実用的な目印だったわけです。
古代エジプトのピラミッドの一部はこの星に向けて造られたとも言われ、夜空の一点が建築や信仰の感覚にまで届いていたことがうかがえます。
さらに時代を進めると、約1万2000〜1万3000年後にはこと座のベガが天の北極に近づき、次の北極星になると予測されています。
今のポラリスとは違う表情の北の星が、また新しい時代の空で役割を担うのです。

今ポラリスが北極星でいる幸運

観望会で歳差運動を早送り投影すると、北極星がツバン、ポラリス、ベガへと移る様子に、会場からは必ず驚きの声が上がりました。
筆者の経験でも、最後に「今見ている北極星も、何千年後かには別の星に役目を譲るんですよ」と添えると、参加者はもう一度、少し違う目つきで空を見上げ直します。
ポラリスは天の北極から約0.7度の位置にあり、北を探すときの目印としてはじつに恵まれた存在です。
そんな星を今の夜空で使えているのは、考えてみれば幸運なことではないでしょうか。
今夜はぜひ、あらためてポラリスを見つけてみてください。

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宮沢 拓海

元プラネタリウムスタッフ。年間60夜以上の観測遠征を続けるフリー天文ライター。星空案内人の資格を持ち、全国の観測スポットと季節の星空ガイドを得意とします。

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