太陽系

火星の大接近とは|次は2035年・観測のコツ

更新: 星野 千紗

火星は、地球と約2年2ヶ月ごとに最接近する惑星だが、そのたびに必ず大接近になるわけではありません。
火星の公転軌道は楕円で、軌道離心率は約0.093と太陽系でも大きく、地球との距離は接近のたびに変わります。
だからこそ、2003年の約5,576万kmや2018年の約5,759万kmのような大接近がある一方で、2022年や2025年のような遠めの接近も生まれるのです。
次の2035年9月の大接近では約5,691万kmまで近づく見込みで、肉眼でも赤く明るい姿を楽しめるうえ、望遠鏡があれば極冠や模様まで狙えます。

火星の大接近とは?まず押さえる基本

火星の大接近は、地球と火星の距離が最も縮まる最接近のうち、特に近くなる回を慣例的にそう呼ぶものです。
地球が内側の軌道から約780日、つまり約2年2ヶ月ごとに火星を追い抜くたびに最接近は起こりますが、毎回が同じ見え方になるわけではありません。
初心者がニュースで混同しやすい「最接近」「衝」「大接近」をここで切り分けておくと、このあとの話がぐっと分かりやすくなります。

「最接近」「衝」「大接近」は何が違うのか

最接近は、地球と火星の距離がその接近の周期の中で最小になる瞬間です。
ほぼ同じころに火星が太陽の反対側へ回り込むと「衝」が起こり、火星は一晩中見えて最も明るくなりますが、両者は数日ずれることがあります。
観望会で「大接近って毎回じゃないんですか?」と何度も聞かれた経験があるが、つまずきやすいのはまさにこのあたりです。

「大接近」「中接近」「小接近」は、距離を区切る明確な数値定義があるわけではなく、慣例的な呼び名です。
火星の公転軌道は楕円で、離心率は約0.093と太陽系で水星に次いで大きいため、近日点付近で地球に近づく年はぐっと迫って見え、遠日点付近ではかなり離れます。
筆者も大接近の年と小接近の年に同じ望遠鏡をのぞいたことがありますが、円盤の大きさの差は想像以上で、同じ天体でも印象が別物でした。

なぜ約2年2ヶ月ごとに近づくのか

地球の公転周期は約1年、火星は687日です。
この差があるため、地球が内側から火星を追い抜くタイミングが約780日ごとに訪れ、そのたびに最接近の機会が生まれます。
周期が一定に見えるのはこの公転速度の違いによるもので、観測者から見れば「少しずつ追いついて、前に出て、また遠ざかる」を繰り返しているわけです。

ただし、同じ約780日ごとの接近でも、距離は一定ではありません。
火星が太陽に近い近日点付近で地球と向き合えば約0.37au級の大接近になり、遠い遠日点付近なら約0.68auの小接近になります。
両者で約2倍弱の開きが出るため、約15〜17年周期で「次の大接近」が巡ってくる仕組みです。
2022年12月1日は約8,145万km、2025年1月12日は約9,608万kmと遠めでしたが、2018年7月31日は約5,759万kmで、2003年8月27日は約5,576万kmまで近づきました。
次の大接近は2035年9月11日で、約5,691万kmまで近づく見込みです。

大接近は『最も明るく大きく見える』チャンス

大接近の強みは、単に距離が近いことだけではありません。
視直径は最大で約24〜25秒角、2018年は24.3秒角まで広がり、平常時の約3.5秒角の約7倍にもなります。
明るさも約マイナス2.8等まで上がり、木星に次ぐ見やすさになるので、肉眼でも赤い色合いと輝きがはっきり感じられます。
小接近では視直径が約14秒角ほどにとどまり、見た目の迫力はかなり控えめです。

望遠鏡で見るなら、ここが本番です。
表面の極冠や大シルチスのような模様を狙うには倍率100倍以上が目安で、口径70mm機なら約140倍まで実用的ですし、視直径が15秒角を超えると小型機でも模様が見えやすくなります。
細部をじっくり追うなら口径20cmクラスが頼もしく、結局のところ見え味はシーイング、つまり大気のゆらぎにも左右されます。
火星本体は直径約6,779km、自転周期24時間37分、公転周期687日で、衛星はフォボスとダイモスの2つ。
赤い色は鉄の酸化が主因で、近年は含水酸化鉄の関与も指摘されており、見た目の派手さの裏にちゃんとした惑星科学の面白さがあります。
観望会で「大接近の日は毎回同じくらい見えるのか」と聞かれるたびに、実際の見え方は距離と軌道の条件で変わると伝えるようにしています。
こうして定義を先に押さえておくと、次の章で火星の見どころを追いやすくなるでしょう。

なぜ近づき方が毎回違う?軌道の楕円が鍵

火星の接近距離が毎回同じにならない理由は、火星の軌道が少しつぶれた楕円だからです。
離心率は約0.093で、太陽系では水星に次いで2番目に大きく、このゆがみが接近の見え方を決めています。
筆者が惑星撮影の計画を立てるときも、同じ「最接近」でも年によって狙える解像度が大きく変わるため、まず離心率を確認するようになりました。

離心率0.093が生む『近日点接近』と『遠日点接近』

火星は太陽に近い側を通る近日点付近と、遠い側を通る遠日点付近で、地球との会い方が変わります。
火星と太陽の距離は地球-太陽間の約1.4〜1.7倍の幅で変化するので、火星が太陽に近い側で地球と接近すると、地球から見た距離もぐっと縮みます。
初心者向けに言い換えるなら、「太陽に近い側で会うか、遠い側で会うか」の差が、そのまま接近の質の差になるのです。

離心率という言葉に身構える人には、このたとえがいちばん伝わりやすいでしょう。
地球の軌道はほぼ円に近いので、距離差の主因は火星側にあります。
つまり、毎回の違いは地球が悪いのでも観測条件が偶然まかせなのでもなく、火星の楕円そのものが作っているわけです。

大接近と小接近で距離が約2倍ちがう仕組み

火星が近日点付近で接近すると大接近になり、遠日点付近で接近すると小接近になります。
距離の目安は、大接近が約0.37au、小接近が約0.68auで、両者には約2倍弱の開きがあります。
見かけの差がそこまで大きいのは、火星本体の位置が軌道上でずれるだけでなく、地球から見た角度の条件まで重なってくるからです。

この違いは撮影でもはっきり効きます。
筆者が夜ごとに火星を追っていると、明るさより先に「今回はどこまで拡大して粘れるか」が変わるのを実感しますし、初心者へ説明するときも「遠くを回るときは小さく、近い側で出会うと大きい」と伝えるほうが理解されやすいです。
おすすめです。
まずはこの距離差が、火星の赤い円盤の見え方を直接変える、と覚えてみてください。

大接近が約15〜17年周期になる理由

大接近は、地球と火星が約2年2ヶ月ごとに繰り返す最接近のうち、特に距離が縮む回を指す呼び名です。
明確な数値定義はありませんが、近日点付近での接近条件がそろう機会は毎回ではなく、そこに約15〜17年の周期が生まれます。
次の大接近へ向けた見通しを立てるとき、この周期を知っているかどうかで計画の立てやすさが変わるでしょう。

実際の接近でも差は大きく、2003年8月27日は約5,576万kmで約6万年ぶりの近さとして話題になり、2018年7月31日は約5,759万kmの大接近でした。
2022年12月1日は約8,145万km、2025年1月12日は約9,608万kmと遠めの接近で、見かけは控えめになります。
2035年9月11日は約5,691万kmまで近づく見込みで、こうした波をたどると、火星観察は「毎回少しずつ違う」ではなく、楕円の配置が作る明確なリズムとして見えてきます。
これを押さえておくと、火星を見る楽しみが一段深くなるはずです。

歴史と未来の大接近|2003〜2035年の距離データ

2003年8月27日の最接近は約5,576万kmまで縮み、約6万年ぶりの近さとして強く記憶されました。
15年後の2018年7月31日も約5,759万kmの大接近となり、火星は赤い円盤として際立って明るく見えました。
最接近のたびに距離が一定ではないのは、火星の楕円軌道がそのまま見え方に表れるからです。

2003年・2018年の大接近を振り返る

2003年8月27日の約5,576万kmは、近年の火星観測史でも特別な値でした。
約6万年ぶりの近さという言葉が広がったのは、単に珍しかったからではなく、夜空での存在感が普段とまるで違ったからです。
明るさだけでなく、口径の小さい機材でも赤い色と丸い輪郭がつかみやすくなり、火星が「遠い惑星」から「今そこにある天体」へと変わる瞬間でした。

2018年7月31日の約5,759万kmも、観測する側に強い高揚を残しました。
深夜まで火星を追い続けた夜、ファインダー越しの赤い円盤に極冠がうっすら確認できたときの感覚は、距離の数字を机上の情報ではなく実感に変えてくれます。
2003年ほどの記録更新ではなくても、15年ぶりの大接近は十分に特別で、観測記録を残す価値のある年でした。

2022年・2025年は接近でも遠めだった

2022年12月1日の最接近は約8,145万kmで、2025年1月12日は約9,608万kmまで離れました。
どちらも「最接近」ではありますが、2018年のような大接近と比べると、火星の見かけの大きさはかなり控えめでした。
遠めの年は、撮影しても模様の見え方や赤い円盤の迫力が一段落ち、同じ火星でも観測の手応えが変わるのが分かります。

筆者もこの差を年ごとの撮影で追ってきました。
近い年には極冠の輪郭や暗い模様に届いた場面でも、遠い年には露出を詰めても円盤が小さく、見える限界がはっきり縮むのです。
つまり、距離差は見た目の印象だけでなく、どこまで記録できるか、どこまで拡大しても破綻しないかという観測条件そのものを左右します。

年月日最接近距離観測の印象
2003年8月27日約5,576万km約6万年ぶりの近さで大きな話題
2018年7月31日約5,759万km15年ぶりの大接近で赤い円盤が際立った
2022年12月1日約8,145万km最接近でもやや遠めで控えめ
2025年1月12日約9,608万kmさらに遠く、見かけの大きさは小さい

この振れ幅こそ、前章で見た楕円軌道の帰結です。
火星はいつも同じ距離で回っているわけではないため、ニュースで大きく扱われる年と、静かに通り過ぎる年が生まれます。
数値の差はそのまま観測熱の差にもつながるので、距離の表は単なる記録ではなく、夜空のドラマの強弱を読む手がかりになります。

次の大接近は2035年9月

次の大接近は2035年9月11日で、約5,691万kmまで近づく見込みです。
次はいつか、という問いに対しては、この年を押さえておけば十分です。
2035年は2018年に近い水準まで戻るため、赤い惑星の存在感をもう一度しっかり味わえる年になるでしょう。

それまでの間も、約2年2ヶ月ごとに最接近の機会は巡ってきます。
大接近だけが火星観測の本番ではなく、毎回の接近で見える模様や明るさの違いを比べる楽しみがあります。
待つ時間すら観測の一部にして、次の夜空を少しずつ追いかけていきましょう。

大接近のとき火星はどう見える?

大接近の火星は、夜空でひときわ目を引く赤い点として見えます。
筆者も大接近の夜に東の空でその一粒を見つけるたび、思わず「これが火星か」と感じます。
明るさと大きさがそろって増すので、肉眼でも惑星らしさが一気に伝わるのです。

肉眼で楽しむ:赤くひときわ明るい星

大接近時の火星は、明るさが約マイナス2.8等まで増し、夜空では木星に次ぐ明るさになります。
しかも赤みがはっきりしているため、点光源のままでも他の星と見分けやすく、初めて見る人でも「これだ」と分かりやすいのが魅力です。
東の空に赤い一点が強く浮かぶ瞬間は、惑星観測の入り口としてとても印象に残ります。

この見え方の強さは、単に明るいだけではありません。
暗い空では赤色の印象が際立ち、星の並びの中でも輪郭を持って感じられるからです。
肉眼で楽しむなら、細かな模様を追う必要はなく、色と輝きの変化を味わえば十分でしょう。
初心者が最初に火星へ抱く感動は、まさにここにあります。

視直径と明るさで見え方はどう変わるか

大接近の火星は、視直径が最大で約24〜25秒角に達します。
2018年は24.3秒角で、平常時の約3.5秒角の約7倍でした。
数字だけ見ると抽象的ですが、望遠鏡ではこの差がそのまま見え味の差になります。
天体が大きく見えるほど、表面の模様を分けて捉えやすくなるからです。

同じ入門望遠鏡でも、視直径が伸びると見える情報量が増えます。
火星は小さな円盤から、少なくとも「面」を持つ対象へ変わり、明暗のムラや模様に目が向くようになります。
筆者が大接近と小接近を見比べたときも、この差は明白でした。
大きいときは模様が追いやすく、小さいときは輪郭をとらえるだけでも一苦労でした。

大接近と小接近の見え方の差

小接近時の視直径は約14秒角にとどまり、大接近の約半分です。
数値で見ると、同じ火星でも別の天体のように感じるほどで、観測の手応えが変わります。
大接近では地形の境界を意識しやすいのに対し、小接近では円盤そのものが小さく、模様はにじんで見えやすいのです。

だからこそ、火星を見る楽しみは機材レベルで分かれます。
肉眼では「色と明るさ」を楽しみ、望遠鏡では「大きさと模様」を追う、という分かれ方です。
視直径が大きい大接近の数週間は、初心者が初めて惑星の模様に挑戦するのに向いた時期で、入門望遠鏡でも成功体験を得やすいでしょう。
見えた、という実感が次の観測へつながります。

望遠鏡で模様を狙う|倍率と機材の目安

火星の表面模様をねらうなら、最初の目安は倍率100倍以上です。
低倍率では赤い点に近い見え方で終わりやすく、どこまで倍率を上げるかが観察の入口になります。
口径70mmの入門望遠鏡でも約140倍まで実用域に入り、視直径が15秒角を超える接近なら小型機材でも模様に届きやすくなります。

倍率の選び方:まず100倍を目指す

倍率を上げれば細部が見える、とは単純に言い切れません。
火星は明るさと見かけの大きさの兼ね合いがあり、100倍を下回ると面積が足りず、模様よりも「赤い点」の印象が前に出やすいからです。
筆者も最初は倍率を上げすぎて、像が暗く揺れてしまい、かえって何も拾えませんでした。
そこから100倍前後に落ち着けると、見え方が一気に安定し、初心者にも観察の筋道が見えてきます。

口径70mmの入門望遠鏡なら、約140倍がひとつの現実的な上限です。
ここで無理に高倍率へ進むより、まずはその倍率帯で像の芯をつかむほうが成功しやすいでしょう。
視直径が15秒角を超える接近では、同じ機材でも火星の円盤がしっかり広がるため、模様の切れ込みが追いやすくなります。
機材の限界と接近条件をそろえる発想が、観察の近道です。

極冠・大シルチスなど狙える模様

狙う対象をはっきり決めると、見えたかどうかの判断もしやすくなります。
まず白く輝く極冠(きょっかん)は、色の対比が取りやすく、火星観察の最初の目印として向いています。
暗く大きな模様の大シルチスはさらに手応えがあり、シーイングの良い夜には輪郭がふっと立ち上がります。
細部を継続的に追いたいなら口径20cmクラスが望ましいですが、最初の一歩は入門機で「模様が見えた」と実感することにあります。

火星は自転が24時間37分なので、見える模様は日々少しずつずれていきます。
同じ時間に観察しても、地表の向きは前日とまったく同じではありません。
だからこそ、極冠や大シルチスの位置を毎回見比べると、単なる点像ではなく、火星が回転する惑星だと体で理解できます。
模様を一つ見つけるだけでも、観察の手応えはぐっと増すはずです。

シーイング(大気のゆらぎ)が見え味を左右する

火星観察では、望遠鏡の性能より先に空の落ち着きが効きます。
倍率を上げても像が揺れて崩れる夜は少なくなく、そこで無理に追い込むと、細部はむしろ見えにくくなります。
筆者が大シルチスをくっきり拾えたのも、シーイングの良い夜だけでした。
条件の良い空では、同じ機材でも模様の縁が締まり、見え味が一段変わります。
観察日は空の質で選ぶ、この感覚を持てると強いです。

火星ってどんな惑星?赤い星の基礎知識

火星は、直径約6,779km、地球の約0.53倍という小さな岩石惑星です。
見た目は地球に近いサイズ感を想像しやすいものの、実際には半分強しかなく、その差が大気の薄さや地表環境の厳しさにもつながっています。
自転周期は24時間37分で地球の1日に近く、公転周期は687日、地球の約1.9倍です。
この“似ているのに違う”感覚こそが火星の面白さでしょう。

### 大きさ・自転・公転の基本データ

火星の直径約6,779kmという数字は、地球と並べると規模の違いがはっきり見えてきます。
半分強の大きさしかないため、重力も地球より弱く、表面を包む大気を保ちにくい条件がそろっています。
だからこそ、火星は地球に似た地形を持ちながら、全体としてはずっと乾いた惑星として見えるのです。

自転周期24時間37分は、観測者にとっても扱いやすい長さです。
筆者が火星を撮影し続けていると、毎晩ほぼ同じ模様ばかりが写り、同じ時刻に狙うだけでは変化があまり出ませんでした。
そこで撮影時刻を少しずつずらすと、模様の位置が日ごとにずれる様子が見えてきます。
地球の1日に近い回転だからこそ、こうした工夫が観測の幅を広げてくれます。

公転周期687日は、地球の約1.9倍にあたります。
火星が太陽のまわりを一周するのにこれだけ時間がかかるため、地球との位置関係が繰り返し同じようにそろうまでには長い時間が必要になります。
約2年2ヶ月ごとの最接近周期の背景にこの公転があり、夜空で火星を追うときの“待つ感覚”を生む理由にもなっています。

### なぜ赤い?鉄の酸化(さび)が理由

火星が赤く見えるのは、地表に広く分布する鉄分が酸化した「さび」が理由です。
砂やちりに含まれる酸化鉄が太陽光を受けることで、肉眼でもはっきり分かる赤みをつくります。
観望会でこの話をすると、望遠鏡越しに見える赤い色と「鉄のさび」を結びつけた瞬間に、火星がただの点ではなく具体的な物質感を持つ天体として伝わるのを感じます。

さらに近年の研究では、含水酸化鉄が関わる可能性も指摘されています。
単純な“鉄がさびた赤”だけでなく、水と結びついた鉱物が色合いに影響しているかもしれない、という見方です。
火星の赤さは一見わかりやすい現象ですが、実際には地表の化学変化が積み重なって生まれた色だと考えると、赤い星の印象がぐっと立体的になります。

### 2つの小さな衛星フォボスとダイモス

火星にはフォボスとダイモスという2つの小さな衛星があります。
地球の月のような大きな伴侶はなく、火星のまわりには素朴で控えめな衛星が寄り添っているだけです。
太陽系の中で見ると、この構成は個性的です。

フォボスとダイモスが小さいことは、火星系全体の印象にもつながります。
月が大きく空に存在感を出す地球とは違い、火星は本体そのものの表情が主役になりやすい惑星です。
観測でも撮影でも、まず火星の表面模様や赤みを追うことになるのはこのためで、衛星はその周辺にある静かな付け足しとして見えてきます。

観測を成功させるためのチェックリスト

観測を成功させるコツは、空を見上げる前に「いつ、どこで、どの条件なら見やすいか」を先に固めることです。
火星は衝の前後数週間が観測の好機になり、その時期を起点にすると夜空での位置も明るさも読みやすくなります。
さらに、南中時刻と高度、当日の天候、月明かり、暗順応までを一つの流れとして押さえておくと、現地で迷いにくくなるでしょう。

いつ・どこを見ればいい?日付と方角

まず、衝・最接近の日付を確認します。
火星は衝の前後数週間に最も明るく、一晩中見やすい時期になるため、ここを外さないだけで観測の成功率はぐっと上がります。
筆者も高度の低い時間帯に見て、大気の揺らぎで輪郭がにじみ、少しがっかりしたことがあります。
ところが南中に近づくまで待つと見違えるほど安定したので、時刻選びは火星観測の入口だと感じています。

次に、観測地での南中時刻と高度を調べておきます。
高く昇るほど大気を長く通らずに済むため、像の乱れが減って赤さも拾いやすくなるからです。
南中前後は、火星をできるだけ上のほうに置いて見るための基準時刻になります。
方角を決める作業でもあるので、当日は「何時に、どの高さまで上がるか」を先に把握しておくと落ち着いて動けます。

天候・月明かり・光害のチェック

当日の天候と月齢も必ず見ておきましょう。
雲が広がれば当然見えにくくなりますし、月が明るい夜は空全体のコントラストが下がります。
ただ、火星自体は明るい天体なので、満月期でも肉眼観測そのものは十分可能です。
暗い空のほうが赤みは際立つので、月明かりや光害の少ない場所ほど見え味がよくなる、と覚えておくと判断しやすいでしょう。

観望会でよく見かけるのが、参加者がスマホの画面を何度も見てしまい、暗順応を崩す場面です。
目が暗さに慣れるまでには15〜30分ほどかかるため、現地に着いたら強い光を避けるだけでも印象が変わります。
そこで赤色ライトを勧めるようになりました。
白色光より目への刺激が少なく、視界を戻しやすいからです。
観測前はスマホの明るさを落とし、最初の15分は空を見ることに集中してみてください。

持ち物と当日の段取り

持ち物は多くありません。
防寒具、赤色ライト、星図アプリがあれば、整った準備になります。
火星観測は望遠鏡がなくても成立するので、まずは肉眼で赤い点を探すだけでも十分楽しめます。
機材を増やすより、寒さで集中力を切らさないこと、暗順応を守ることのほうが観測の手応えにつながるでしょう。

当日は、到着したら最初に方角を決め、次に月と雲の位置を確認し、そのあとで15〜30分ほど目を慣らします。
赤色ライトは足元確認だけに使い、スマホは必要なときだけ短く点ける流れが見やすいです。
準備が整ったら、南中前後の時間帯に火星を狙いましょう。
見つけた瞬間の手応えは小さくありません。
まずは無理のない装備で、静かに空を待ってみてください。

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星野 千紗

元カメラメーカーマーケティング部門出身の天体写真家・ライター。惑星撮影を年間100夜以上追いかけ、撮影テクニックから宇宙の科学まで幅広くカバーします。

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